ホールとパウダーの使い分け

ホールスパイスとパウダースパイスの違いは？

スパイスの原型を残したまま乾燥させたホールスパイス、
それを粉状に加工したパウダースパイス

両者には、
どんな違いがあり、
どんな使い分けをすればいいのか、
今回は、その辺に迫ってみたいと思います。

ちなみに今回のネタは、Instagramより
＠az_ucci_さんに提供して頂きました。
ありがとうございます！

〇スパイスの加工形態

・『フレッシュ』
・『ドライ』　→　「ホール」　or　「ドライ」

スパイスは、『フレッシュ』と『ドライ』に分類されます。
『フレッシュ』は、生のままの物です。
例えばパクチーや三つ葉、大葉なんかがそうです。

『ドライ』は、
乾燥させ水分を飛ばすことによって、
保存性が高まり、香りの成分が凝縮されています。
『ドライ』は、さらに「ホール」と「パウダー」に分類されます。

「ホール」は、原形のままの物です。
料理する際に、このまま使うか挽いて粉状にして使うかを
スパイスの特性や調理の意図によって使い分けます。

「パウダー」は、「ホール」を粉末にしたものです。
毎度挽くのが大変なので、「パウダー」にして販売されています。

〇ホール、パウダーでの有効成分の状態

スパイスは、
「香りづけ」「色付け」「辛味付け」「臭み消し」
の用途で使われます。
スパイスが持つ有効成分によって、その働きが決まります。

ホールを挽き、パウダーにすることによって、
有効成分にどんな影響があるのでしょうか？

例えば、
クミンの場合、香りの有効成分の「クミンアルデヒド」という揮発性の精油成分が含まれています。

S&B食品が行ったクミンをすりつぶした時に出る香りの実験から、
”クミンアルデヒドは、クミンシードの外皮付近に偏在している”
”クミンを粉砕した際、クミンアルデヒドが放出される”
という結果が出されています。

つまり、香り成分は、
「ホール」　　→　外皮付近に蓄えられている状態
「パウダ」ー　→　放出されるている状態
ということになります。

〇「ホール」と「パウダー」の特徴と使いこなし

「ホール」と「パウダー」を使いこなすには、
それらの特徴を把握しておく必要があります。

特徴①「揮発性」
「ホール」は、有効成分を揮発させにくい。
「パウダー」は、有効成分を揮発させやすい。

特徴②「油溶性」
「ホール」は、有効成分を時間をかけてじっくりと放出していく。
「パウダー」は、有効成分を即座に放出する。

特徴③「形状」
「ホール」は、後で取り出せる。食感を楽しめる。
「パウダー」は、混ざりやすい。

これらの特徴を踏まえて、スパイスカレーの調理工程で、
スパイスが登場する場面を見てみましょう。

・油にスパイスの香りを移す。
調理の初めの行程です。
ここでは、スタータースパイスとして、「ホール」を使います。
このスパイスは、取り出さない限り最後まで入っています。
「ホール」なので、調理中じっくりと有効成分を放出していってくれます。
クミンやマスタードシードなどは、食感を楽しめます。
ローリエやシナモンは取り除くこともできます。

・野菜をいためた後、スパイスを投入して、肉を入れる。
中盤の行程で、ここでは「パウダー」を使います。
まず野菜を水分が飛ぶまで炒めますが、ここで水分が残っていると、
「パウダー」の有効成分の一部が水に溶けて一緒に蒸発してしまうので気をつけてください。
「パウダー」の有効成分は、油に溶け込んで香りを放ち、
肉の臭み消し、カレー全体の香りづけとして働いてくれます。

・テンパリングしたり、後がけスパイスをかけたりする。
最後の行程で、カレーにさらに香りと食感を加えることが目的です。
テンパリングの場合、「ホール」を使います。
「パウダー」を油にじかに入れると焦げやすいのでやめた方がいいです。
そもそも「パウダー」を使うなら、そのままかければいいですし。
生のスパイスは、体に良くない作用を及ぼすものもあるので、気を付けてくださいね。

・保存の仕方
ここでは、有効成分の放出に特化して考えます。（保存方法についてはこちら）
共通して言えることは、湿気に当てない、できるだけ密封するということです。
特に、「パウダー」は有効成分を揮発させやすいので、注意が必要です。

〇最後に

「ホール」と「パウダー」のそれぞれの特徴を知っておくことで、
効果的な使い分けができます。

あと「パウダー」は、あくまで「ホール」を粉状にする手間を省いたもの、という認識を持っておけば、「パウダー」が無くても、「ホール」を挽いて使うこともできるし、なによりその方がそのスパイスの本来の香りが楽しめるように思います。