肉の加熱調理~「安全」と「美味しさ」の両立を目指して~

「安全」と「美味しい」のための具体的な温度は?

以前『「肉の煮込み」を考える』(参考資料にリンクを貼っています)について記事を書きましたが、

今回はさらに具体的な温度に踏み込んで考えていきます。

スパイスカレーでは、
最後に肉を表面の色が変わるまで焼いて、その後「弱火で煮る」ことをします。
この「弱火」とは、いったいどれぐらいの温度で、どれぐらいの時間
肉を煮ることを表すのでしょうか?

肉と加熱の関係を知ることで、
「安全」と「美味しさ」を両立した絶妙な火の通し加減
ができるようになるはずです。

〇肉を加熱調理する理由

①「安全」のために
肉は生で食べるのは危険です。
生肉には、食中毒になる細菌やウィルスや寄生虫が存在します。
しかしこれらは、熱に弱いという特性があるので、加熱殺菌できます。

②「美味しさ」のために
加熱することにより香ばしさやゼラチンによるとろみなど、
新しい美味しさを加わえることができます。
しかし、逆に加熱することによって失われる美味しさもあります。

 

「安全」と「美味しさ」のバランスを考えて加熱する必要がありますね。

〇加熱殺菌に必要な温度(「安全」のために)

加熱による殺菌では、
表面だけを高熱で加熱しても、中心部の菌やっつけることはできません。
しっかりと、中まで火を通す必要があります。

では「中まで火を通す」とは、
具体的にはどの程度の温度で、どの程度の時間加熱すればよいのでしょうか?
厚生労働省のHPに以下のように書かれていました。

食肉の加熱条件に関するQ&A
Q.食肉による食中毒防止のための加熱条件として、中心部を 75℃で 1 分間加熱することが必要とされていますが、これと同等の加熱の条件はどのようなものがありますか?
A.「75℃、1 分」と同等な加熱殺菌の条件として、「70℃、3 分」、「69℃、4 分」、「68℃、5 分」、「67℃、8 分」、「66℃、11 分」、「65℃、15 分」が妥当と考えられます。
また、調理の現場においては、中心温度計の適切な使用により、食肉の中心部の温度が目標とする温度を下回らないことを確認し、確実な加熱殺菌が行われるようにする必要があります。

これは、とても参考になりますね。

 

〇たんぱく質と温度(「美味しさ」のために)

『「肉の煮込み」を考える』の記事と重複してしまいますが、大事なことなのでもう一度記載します。
肉を加熱すると起きる変化は、肉に含まれるたんぱく質が大きく関係しています。
肉には数種類のたんぱく質が含まれており、
それぞれで変質が始まる温度が違います。
食感や食味に関わるたんぱく質と温度の関係は以下の通りです。

50℃から ミオシン  柔らかい美味しいところ → サクッとした食感に変容
56℃から コラーゲン 固い → とろとろのゼラチン質に変わる
60℃から 色     血の赤色 → 透明感が無くなっていく
66℃から アクチン  肉の水分を保持している → 肉汁が流れ出る

肉の美味しさを維持して、加熱するには、
残したいたんぱく質 ミオシン、アクチン → 柔らかさと肉汁を維持
無くしたいたんぱく質 コラーゲン → 筋のような固さを無くす
ということを意識する必要があります。

 

〇美味しさをキープしながら十分に殺菌する加熱方法(「安全」と「美味しさ」のために

では、肉のいいところを残して、しっかり殺菌できる方法を考えてみます。

たんぱく質と殺菌のバランスを考えると、
「65℃で15分」
が、一番よさそうです。

ただ、水分をなるだけ排出させないために、
初めに、表面を焼いて壁を作ることも大事です。
また、サクッとした食感を大事にするなら、
最後に、メイラード反応が出るぐらいの温度160~180℃で表面だけ焼いてやるとよさそうです。
鶏の唐揚げの二度揚げは、これに当てはまりますね。

 

〇スパイスカレー作りでの肉の加熱方法

スパイスカレーで、肉の表面が白くなるまで焼いてから、弱火で煮込むという方法は、理にかなっていました。
これまでの調べたことから、より具体的にまとめたいと思います。

①肉の表面を、160~180℃の強火で香ばしく焼く(メイラード反応を起こす)
②表面が焼けたら、肉の中心温度が65℃になるように、弱火に調節する
③15分煮込んで完成

これで理論上、肉を「安全」かつ「美味しく」加熱できるはずです。

別に記事『「肉の煮込み」を考える』でも、
煮込み時間が20分程度までなら、
肉の美味しさをキープできることが分かっているので、
上記の調理方法は、ベストだと思います。

と言いながらも、やはり「安全」を最優先すべきだと思います。
肉の中心部までしっかりと火を通す!ことを確実に行いたいと思います。


<参考資料>

・厚生労働省HP「お肉はよく焼いて食べよう」
・tomosun curryの<SPICE CURRY LABO>『「肉の煮込み」を考える』

 

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